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デリー大学のミランダハウスカレッジという女子大で、
はるばる日本から留学生(自由聴講生)として、勉強しに来ている藤井さん。
興味のある分野の環境問題の勉強を始め、NGOでのボランティア活動にも参加するなど、
かなり精力的に活動されています。そんな彼女に色々とお話を伺ってきました。


【Profile】
藤井 美優紀(ふじい みゆき)
1991年山・川・海に囲まれた兵庫県神戸市に生まれ、六甲山を駆け回って育つ。
創価大学法学部在学中。インドで驚いたことは地下鉄の8人掛けの席に11人くらい座るのが普通なこと、ポイ捨て&立ちション文化、硫黄の臭いがたちこめる町中の川。
好きな街は「ALWAYS三丁目の夕日」みたいな街並みで人が温かいコルカタ。

お住まいの地域:デリー首都圏 ニューデリー (New-Delhi National Capital Territory of Delhi)

「水を無駄遣いするな」


「インドへ来ることになったキッカケ」

さいむら:インドに来ることになったキッカケを教えてください。

藤井:大学生の間に絶対留学をしたいと思っていました。小さい頃から、環境問題に関心がずっとあって。そういう問題の改善に携われるような仕事に将来就きたいと思っています。日本だと結構整っているので、社会に出る前に発展途上国で現状を見たいっていう想いが何となくあって。それで、英語圏で、環境問題の現状が見れるところっていうのを探した時に、アフリカとかもちょっとよぎったんですけど、危険なのと遠いっていう事もあって。

そうして、インドの事を考え始めたら、突然インド人の友達ができたり、TVでインド特集が組まれていたりとか、「これは行くしかないな」と思いました(笑)

よく「呼ばれた」っておっしゃる人いますけど、そんな感じでしょうか(笑)

さいむら:もともと、小さい頃から環境問題に興味があったんですか?

藤井:これといって、キッカケってわからないんですけど。なんか小学生の時から、隣で友達が水道の水をバーって出しっぱなしにしているのを睨んでいるような子でした(笑)

阪神淡路大震災で水不足を経験したことも、少し関係しているかもしれないって最近は思いますけど。

さいむら:なるほど。それは、おいくつ位の時ですか?

藤井:4歳の時ですね。コップ1杯の水で丸一日過ごすとかもありました。
トイレももちろん動かなかったですし。

さいむら:そういうのもキッカケかもしれないんですね。

藤井:ハッキリこれや!っていうのは言えないんですけど、小学生の時から睨んでましたね(笑)
水を無駄遣いするなって。

お花があしらわれた大学の廊下

お花があしらわれた大学の廊下

「環境と社会」


「大学生活について」

さいむら:こっちの大学はいつから通われているんですか?

藤井:インド自体に来たのは去年の3月末、ホーリーっていうお祭りの前日くらいに来て、語学学校に通って、8月の上旬くらいからデリー大学の授業を受け始めました。

さいむら:8月っていうのは、学期の始まりなんですか?

藤井:インドの学期は7月下旬始まりなんですけど、私は入学手続きに結構手こずって、ちょっと間に合わず。2週間遅れではいった感じですね。

さいむら:具体的にはどんなことを勉強されているんですか?

藤井:社会学を専攻しています。1セメスター目は、インドのカースト制度とか、アーグラ地方の地主と小作人の関係性とかを勉強する、結構ディープな授業も取りましたし、あとUrban Sociology(都市社会学)という授業ではインドの都市部の歴史やスラムの事などを学びました。結構Sociologyって広く浅く勉強する感じです。

なんで、Sociologyを取ったかっていうと、環境問題って人の行動が生むから、社会の何が原因になっているのか知ることができるかなって思って取ったんです。
今学期、2セメスター目は、がっつりEnvironment and Society(環境と社会)っていう単元をとっています。

さいむら:授業は全て英語ですか?

藤井:全て英語です。

さいむら:もともと英語は得意だったんですか?

藤井:そうでもないですね(笑)

さいむら:インドの授業は日本の大学と比べて何か違いますか?

藤井:形式的にはすごい似ています。先生が講義をして、生徒がそれをノート取ったりとか。
ただ、先生と生徒にもよるんですけど、結構、双方向になりますね。
生徒が先生の話の腰を折って、「今のところわかりません」とか、「私はこう思います」とかっていう発言をしても、全然それはジャマ扱いされない。授業に反映される感じがあります。

さいむら:ディスカッションみたいな感じですかね。

藤井:そうですね。その脱線からずーっとディスカッションしたこともありますし。アツイ先生とアツイ生徒の時は特にそうなりますね。私は蚊帳の外でしたけど、面白いなぁと思って聞いてました(笑)

さいむら:デリー大学って男女比はどうなんですか?

藤井:デリー大学っていうのは70校くらいのカレッジの集まりで、デリー大学っていうものはないんです。

さいむら:総称なんですね。

藤井:私はミランダハウスカレッジっていう女子大に通っています。70校のうち、共学と女子大だけで、おそらく男子大はないと思います。だから、結構キャンパスを歩いていると女性の方が多い気がします。
時によっては、デリー大学の最寄駅で、ボディチェックの列が男性より女性の方が長い時があります。

さいむら:それは珍しい光景ですね。

藤井:大体男性の列の方ばっかり長いと思うんですけど。

さいむら:ある意味、安心ですね。

藤井:そうですね。

最寄駅にて女性の長蛇の列

最寄駅にて女性の長蛇の列

「バースデイサプライズ」


「インドに来て一番よかったこと」

さいむら:インドに来て一番よかったことは何ですか?

藤井:女子大に入学して、めっちゃ友達になってくれて、すごいみんな優しくって。
私の誕生日が11月で、その時は、大学の寮に住んでいたんですけど、何をするでもなく部屋で勉強してたら、「コンコン」って急に部屋をノックされて、ドアを開けたら「ハッピバースディ♪」って友達7人くらいで、ケーキ持って突撃してくれて。

「えー!?」みたいな(笑)

それで、その場で歌を歌ってくれて、「インドでは誕生日の人がケーキを切るの」って言われて、人数分に切って、みんなで食べて、顔にケーキ塗られて、写真とって、みたいなことをしてくれた時はめっちゃ楽しかったですし、本当に嬉しかったですね。

さいむら:12時になった瞬間に?

藤井:ちょうど時計の針が12時回った瞬間に、「コンコン!」ってしてくれて。

さいむら:いいですね、あったかいですね。

藤井:もう本当にミランダの女の子たちは本当に優しいです。

大学の友人たちからサプライズバースデイ♪

大学の友人たちからサプライズバースデイ♪

「入学手続き」


「インドで一番大変だったこと」

さいむら:インドに来て一番大変だったことはなんですか?

藤井:入学手続きが、死ぬほど大変でした。
日本にいる時に書類を提出して、インドに来てから外国人生徒用オフィスでネゴシエーションする日々が続いたんです。
「私の書類届いているよね?」「届いているよ」って言われて、「今手続きしてくれてるんだよね?」「もちろん!」って言われて、それが2ヵ月ずっと続いて。
2ヵ月後にオフィスのヘッドの人に会うことができたんです。ずっと通っていたから。そしたら「お前の手続き何もしてないから」って言われて。
結局、2ヵ月間騙され続けたというか、結局蓋を開けたら何もしてくれていなくって。

その時点で、7月にはいっていたんですけど、授業開始は7月後半で、「いつ許可がおりるんですか?」って聞いて。ヘッドの人に会えた時に、「なんで入りたいのうちに?なんなの!?」みたいな。私の大学から私以外にも結構入学希望者が書類をだしてて、「なんでお前の大学からは今年に限ってこんなにいっぱい来てるの?」みたいな。

自由聴講生で全員応募していたんですけど、「自由聴講生とかいらんから!」みたいなことを言われて。“学びたい”っていう想いで来た学生に対して、要らないっていう態度を取られたのは、ショックでした。

だから、その場で「~~こういう想いで勉強したいんです」っていうのを伝えて、そしたら、「じゃあ、具体的にどの授業取りたいのかを書いて持って来い」って言われて。そっからもうイタチごっこじゃないけど、行く度に、「こういう書類だして」って聞いていなかった要求までどんどんされるようになって。

それがずーっと時間がかかって、行く度に違うものを要求されるし、行っても私の顔を見ただけで覚えられているから「はぁ・・・」みたいな。向こうも相当忙しい時期で、私たち以外にも正規生の手続きをしてて忙しいのは分かるんですけど。結局5月からネゴシエーションを始めて、3カ月近く経った時に、なんかもう「この闘いに終わりが見えない」ってなってインド人の知り合いに相談したんです。

そしたら、「私の知り合いにデリー大学でちょうど働いている人がいるから、あなたを助けられるかも」って言われて紹介してもらいました。
その人が会計監査人で、その時ちょうど監査の時期で。
しかも「デリー大学をチェックしているところだ」っていうんで、その人が「外国人の女の子が一生懸命手続きをしているけど、どうもこのままじゃ入学できそうにない」っていうのを聞いて「わかった。じゃあ一緒にオフィスについて行ってあげるよ」って言ってくれて。

それで一緒に行って、そのインド人の彼が「ぼく、こういうものです」って言ったら、ガッと事が動きましたね。
ちょうどその時、デリー大学は会計監査の時期だった事もあり、その人に対して強くでられなかったみたいです。

そこで、私が3ヵ月間手こずっていた手続きが1日で動いて、次の日に入学許可証が発行されました。

本当に人の縁でその人と出会えて、たまたま監査の時期で、彼も「監査の時期じゃなかったら、オフィスの人達も私の言う事聞いてくれなかったと思うよ」って言っていたので、全てのタイミングが合って。
結局、15回もオフィスにきたし、書類も出せっていわれたものは全部だしたので。

さいむら:はいるのだけで、大変ですね。。

藤井:もともと自由聴講生っていうのは通年で受け入れているものなんですけど、たまたまデリー大学が2013年度に3年制から4年制に転換をして、そのゴタゴタで、「自由聴講生の相手なんてしてられへんわ」ってなった時期で。

さいむら:タイミングが悪かったといえば、悪かったんですね。

藤井:そうですね。例年、大変な手続きではあるみたいですけど、今年特に大変だったというか。

さいむら:本当にしんどいですね。でも入学できてよかったですね。

藤井:1度だけ泣きながら帰ったこともありましたね(笑)
さっきの人たちだけじゃなく、助けてくれたすべての友人たちに本当に感謝です。

教室の中の一枚

教室の中の一枚

「今どきっぽい」


「デリー大学周辺ってどんな所?」

さいむら:学校へはどこから通われていたのですか?

藤井:8月の中旬から12月の末日まで学校の寮に住んでいました。

女子寮で、芝生とかお花とか植えてあって、緑が多いです。
キャンパス通りにも木がたくさん植わっているので、晴れた日は木陰がサンサンと降り注いでいるような。大通りがあって、その通り沿いにカレッジがたくさんあります。

さいむら:生活環境はどうでしたか?

藤井:食堂があって、三食とティータイム全てついていたので。だから、もう最高でした。基本的にそこの料理で満足しているのであれば。

さいむら:特に外で食べる必要もないと。

藤井:いや、やっぱり寮のメニューはルーティンが決まっているので、飽きてきた時には外に食べに行ったりとかしていました。

さいむら:大学の周りはどんな感じですか?都会なんですか?

藤井:都会でもないです。でも、サイクルリキシャーで20Rpsくらいの距離にカムラナガルっていうお店が集まっている地域があったので、そこに行けば結構それなりの今時っぽいお洋服も買えるし、サリーも買えるし、クルタも買えるし、カフェもあるし、っていうような。
マクドナルドとKFCもあるようなところです。

さいむら:いいですね。

藤井:基本的に、そこに行けば何でもあるので、そういう場所が大学のそばにありましたね。

さいむら:どうしてパハールガンジへ移ってきたのですか?

藤井:門限が8時半なのが嫌すぎて(笑)

さいむら:8時半!?

藤井:女子大の女子寮だったので、デリー大学の中でも一番厳しくって。
やっぱりインドに来たら、こっちの友達とかできて夜とか遊びたいってなっても、ナイトアウト(外泊許可)を前日までに取らないとそういう事ができなくって。
しかも、ナイトアウトを取るのもローカルガーディアン(知り合いのインド人の保護者)を付けて、その人のサインがいるとか、どういう目的で、とか、それも寮母さんに全部説明してサインを毎回もらいにいかないといけなくって、でも寮母さんの虫の居所が悪かったりすると、もらえなかったり(笑)

結構、寮母さんが難のある人で、いい時はいいんですけど、機嫌の悪い時は生徒に当たるタイプだったので。ストレスになって。

そこ以外は完璧でした。ご飯も私は好きでしたし、ルームメイトも本当に良い子だったし。設備もインド式トイレだし、シャワーとかも全て共同でしたけど、それは苦ではなかったので。
本当にそのナイトアウト取るのが大変、門限8時半、この2つだけが嫌で。

さいむら:よかったですね。今は(笑)

藤井:フリーダムです(笑)

カレッジが立ち並ぶ通り

カレッジが立ち並ぶ通り

「NGO活動と性教育」


「今後の目標・夢について教えてください」

さいむら:今後の目標・夢を教えてください。

藤井:一昨日くらいからNGOでボランティアを始めました。内容は、環境問題の調査、例えば、この都市ではこれだけ汚水が排出されて、これだけ処理されて、これだけ汚いまま川に流されて、とかっていうのを全部調査するNGOにはいったんですけど。

インドにいる間の目標は、そこでしっかり力をつけて、将来環境関連の仕事に就けるように、実力とまでいかないですけど、ノウハウを身につけたいと思っています。

あと、インドと言えばレイプ問題も話題になったと思うんですけど、こっちに来て学生寮のルームメイトと話していくうちに、その子もそれに対して怒っている子で、「インドには性教育がないから、そういう事件も起こるんだ」って言っていたのをキッカケに、インドでの性教育についても興味を持ちました。

インドでは、性教育がタブー視されていて「若者にそんなものを教えるのはフシダラ」みたいな。
学校によっては少し教えているところもあるみたいですけど、ほとんどないような状態で。でも若者は当然興味を持つし、実際婚前交渉が若者の間で広がりつつあるっていうデータもあがってきています。
大家族で住んでいる人が多いから、プライバシーもない中どうしてんだろうって感じですけど(笑)

さいむら:若者はそうなんですね!

藤井:ちゃんとした教育は受けないでインターネットとかの知識だけでそういう行為に及んでいるし、友人にちょっと話しを聞いたら、彼氏がコンドームを使いたがらないって。無いほうが気持ちいいから。「子供ができたらおろせばいいじゃない」って平気な顔して言うみたいです。

それが、人間性の問題っていうよりは、無知から来ていて。病院へ行けば、長い列があって「これみんな今日おろす人たち」って。お金もあまりかからないみたいで、みんな簡単におろしてしまうようです。

さいむら:リスクも知らないっていう事なんですね。

藤井:そうなんです。女性の身体にどのくらい負担があるかも知らないから簡単にしてしまうし。
もう眩暈がしますよね。だから性感染症の知識とかも、全然ない。
むしろ性感染症について教えるのがとんでもないっていうか、一番タブーみたいになっているみたいです。

私はすごいその現状を知って「なんとかせなアカンよな」って思って。そういう性教育をしましょうっていう働きかけをしている団体ってあるんですけど、インドにも。
結構、若者の意見を取り入れた性教育を広く普及すべき、っていうところで止まっているように感じて。
だからもう私がつくろうと思って。若者の意見としてこういう性教育がされるべきだっていうのを帰国までに、ペーパー仕上げて、「これが私が思う性教育」みたいなものを作って、新聞社に送るなり、担当している省庁に送るなりしたいなって思いますね。

さいむら:すごい。だいぶ大きい話になりましたね。

藤井:文化とか価値観の問題なので、すぐ変わるわけないとは思っているんですけど。インドに来て、自分がこんな事に興味を持つとは思いもしなかったんですけど、インド人のルームメイトのおかげで、現状が知れて、おかしいって思えて。「つくったれ!」と思ったんです。

さいむら:いいですね!「無いならつくろう」っていう発想。

藤井:なので、インドにいる間にNGOで頑張るのと性教育ペーパーを作るっていう、その2つが私の目標ですね。

end miyuki

「違いを尊敬できる人」


「インドで働きたい・興味があるっていう方へメッセージ」

さいむら:インドに興味がある、働いてみたいって人に一言メッセージをお願いします。

藤井:楽しいです、居心地良いです(笑)
まぁでも本当にムカつく事もあります。「しばくぞ!」って思わされるくらいムカつくインド人もいます(笑)

なんでしょうね、やっぱりこの国に居るからには、“違いを尊敬できる人”でいたいなって思うので。「みんな違ってみんないい」というか。
違いを尊敬しあえる、受け入れられるというか、そこで怒っちゃわない。自分の常識を押し付けない。ゆるーく「そんな考え方もあるんだなぁ」みたいな感じでいられればいいんじゃないかなと思います(笑)

(インタビュー・編集・写真=雜村洸宇)

<インタビューを終えて>
インドの若者視点での話が非常に新鮮に感じました。
現地で生活したからこそ感じた問題意識があって、
それを形にしていこう、自分でやろうっていう考えなんて、
私の大学生時代では考えられません(笑)
藤井さんの今後に期待大ですね!