元政府系のIT部門で働き、その後、ITベンチャーへ転職。
26歳とこれからインドを担っていくSandeepさんに、
仕事からインドの恋愛事情まで、日本ではなかなか聞けないお話を伺ってきました。
Sandeep Sudheer(愛称:サンディープ)
1987年生まれ。Kollam(Quilon)出身。Trivandrum在住。
Marian Engineering College卒業後、National Informatics Centre(NIC)にてIT部門に配属。
2011年Ylem Infotech 立上げに参画。同社、Business Manager (現任)
お住まいの地域:ケララ州 トリバンドラム (Trivandrum Kerala)
「インドで一番リッチな寺院」
「トリバンドラムのいいところ」
さいむら:トリバンドラムのいい所を教えて下さい。
Sandeep:トリバンドラムはケララ州の州都です。
さいむら:たしかに。他にはありますか?
Sandeep:パドマナーバスワーミィ(Padmnabhaswamy)。有名なお寺があります。池の近くにあります。
さいむら:どうして有名なんですか?
Sandeep:理由は簡単です。とてもリッチなお寺だからです。
さいむら:というと?
Sandeep:昔、トリバンドラムを統治していた王様が、お寺の中に全ての財宝を隠していました。
そして、最近になってそれらが開けられることになったんですけど、その額がすごいんです。
総額200億ドル(日本円で1兆6千億円)と言われています。
おそらく、イギリス統治時代にイギリスから見つからないように隠していたのでしょう。
しかも、それが全てではなくて、まだ開けられていない扉もあるようです。
もう十分すぎるほどの、富が見つかったらまだ開けられていないのかも知れませんが、よくわかりません。
さいむら:すごい話ですね。
「インド最大のITパーク」
さいむら:他にもありますか?
Sandeep:インド最大のITパーク、テクノパークがあります。
さいむら:有名なんですか?
Sandeep:もちろん!一番大きいですかね、No.1です。
さいむら:やっぱり、誇らしいことなんですか?
Sandeep:そうですね。実際、ほとんどの人はここ(テクノパーク)で働きたいと思っています。
例えば、パッタム(市街地)で月の給料が10,000ルピーの会社と、テクノパーク内で給料が5,000ルピーの会社があったとしたら、きっとテクノパークの会社を選ぶと思いますよ。
さいむら:本当に!?
Sandeep:ほんとどの人はここで働くのが夢なんです。正に、「Harmony at work(テクノパークのキャッチフレーズ)」。
さいむら:おぉー
Sandeep:大学生のほとんどは、ここで働きたいと思っています。
ちなみに、私はそこまで興味なかったんですけどね。
外から見たら、確かに華やかではあります。大学生の時に、プロジェクトで何度かテクノパークの中で仕事をしてて、でもその時に感じたのは、特別スペシャルな事ではないかなと感じました。(テクノパークの)外と変わりません。
さいむら:リアリストですね。でも、やっぱりテクノパークで働いているとステータスになったりするんですか?
Sandeep:どうなんでしょう。ただ、よく会社名を尋ねられた時に、社名の次に場所を答えると思うんですけど、その時に、「テクノパークで働いている」って言うと、みんなすぐわかってくれます。
反対に、違う場所だったら、「大きい会社?小さい会社?どんな会社?」とかって、事細かに聞かれますよね。そういう意味ではネームバリューはあるのかと思います。
さいむら:かっこいいですね!
「単調な毎日にうんざり」
「今の仕事をはじめたきっかけ」
さいむら:今の仕事を始めたきっかけを教えて下さい。
Sandeep:以前は政府の仕事をしていました。中央政府のIT部門で、場所はトリバンドラムから3時間ほど車でいった場所です。
さいむら:どんな仕事をされてたのですか?
Sandeep:パソコンにソフトをインストールしたり、メンテナンスしたりしていました。
さいむら:どうして、仕事を変えようと思ったのですか?
Sandeep:理由は2つあって、1つ目はトリバンドラムに帰ってきたかったからです。
2つ目は、もっと多様性のある仕事に就きたかったからです。
政府での仕事はとてもノンビリしていて、よく仕事中も寝ていました(笑)
あとは時間を持てあましていたので、個人的な勉強をしたりとか。だから、もっと忙しくて、色々な仕事をしたいと思ったんです。
単調な毎日に嫌気が指していたんですよね。
今は、忙しすぎますけど(笑)
さいむら:今現在は、主に何をされているのですか?
Sandeep:人事、総務、経理、法務、に加えてスタッフの業務サポート、ホステル管理、オフィス移転のPM。。
何をしていないかを上げた方が早いと思います(笑
「時間を守る、几帳面」
「日本のイメージについて」
さいむら:日本についてのイメージを教えて下さい。
Sandeep:出張で、一度日本に行ったことがありますが、とてもいい印象です。
とにかく几帳面、時間を守る。そんなイメージです。
そして、日本から(インドに)帰ってきて、2つ変えようと心に決めた事がありました。
1つは、時間を守ること。常に時間を意識するようにしました.
たまに守れていない事もありますけど、出来るだけ時間を守ろうと努力しています。
例えば、MTGがあって、以前だったら「あと5分でいくよ」と行って平気で遅れていました。だけど、日本から帰ってきてからは、「10分でいくよ」って言うようにしました。そしたら、6~7分経ってから行っても遅れていることにはならないですよね。
今はまだ、そうやって時間を意識しながら生活しているけど、いずれは意識しなくても、時間通りに行動できるようになりたいと思っています。日本人みたいに。
さいむら:いいですね!
Sandeep:もうひとつ、日本へ行って、いいなと思った事がありますが、残念ながら、それは変えられていません。
さいむら:なんでしょうか?
Sandeep:ゴミをポイ捨てすることです。
日本から帰ってきた時は、外でゴミを捨てないようにしようと決めていました。
でも、日本ではゴミ箱がいっぱいあるじゃないですか、そこらじゅうにゴミ箱がありますよね?日本は。
店の中にもゴミ箱があるし、道にもあるし。でも、インドにはないんですよね。
さいむら:確かに、ほとんど見かけないですね。
Sandeep:政府は何もしないですからね、ゴミについては。
政府は市民が自分達で処理すればいいと思っているんです。
さいむら:そうなんですね。
Sandeep:だから、常にゴミをポイ捨てしないでいるのは難しいです。
だけど、少しだけ意識して、今は極力持ち帰るようにしています。
あとは捨てるにしても、場所を選ぶようにしています。
すでにゴミがいっぱいある場所には捨てるけど、きれいな場所には捨てないようにするようにしました。
「ホスピタリティ」
「日本に行って驚いたこと」
さいむら:日本に行って驚いたことは何ですか?
Sandeep:ホスピタリティです。
店員さんがみんな挨拶してくれます。例えば、お店に入った時に、必ず声をかけられます。
しかも、何かモノを買った時も、何かしら声をかけてくれるんです。
だけど、インドでは何も声をかけられないし、感情が無い、まるで、銅像みたい。
さいむら:挨拶をされると、どんな気持ちになりますか?
Sandeep:そうですね、気持ちが良かったですね。
もし、お店に行って、私が何も買わずに帰るのであれば、それは店員さんを悲しませるのではないか?とさえ思ってしまいます(笑
少なくとも、私は店員さんに「ごめんね、何も買えなくて」と謝りたい気持ちになります。
さいむら:優しいですね(笑
Sandeep:いやいや、店員さんのほうが優しかったですよ(笑
ちなみに、インドではそんな気持ちにはならないですけど。
さいむら:(笑
「ごめんなさい、は言いません」
さいむら:他に何かありますか?
Sandeep:交通機関が非常に便利だと感じました。
何より、日本は時間通りに電車が来ます。
例えば、4時34分に来ると言ったら、本当にその時間きっかりに電車が来ますよね。
でも、ここインドは4時34分になったら、4時34分きっかりにアナウンスがはいります。
「1時間、遅れます。」
さいむら:なるほど(笑
アナウンスがあるんですか?
Sandeep:はい。残念ながら、ほとんどの場合アナウンスがはいって遅れます。
電光掲示板には正規の時間が表示されているけど、ほとんどの場合、遅延しているためアナウンスの必要があります。
さいむら:申し訳ございません、みたいな感じですか?
Sandeep:謝ったりしませんよ。「この理由によって遅れます」というだけです。
「ごめんなさい」は言いません(笑
「自分で相手を選べない」
「インドの恋愛について」
さいむら:インドの恋愛事情について、日本との違いについて教えて下さい。
Sandeep:そうですね、一番の大きな違いは、自分達が結婚相手を自分で選ぶことができません。
私たちは、必ず両親の許可を得なければいけません。
さいむら:おぉ、それは絶対なんですか?
Sandeep:ほとんどの場合はそうです。大体インド全体の80%くらい。
さいむら:80%!?
Sandeep:でも、最近は少しずつ変わりつつあります。
例えば、北インド、バンガロールとか。それらの都心部については変わってきています。
おそらく都市部では(自由恋愛とそうでない割合)半分半分くらいかと思います。
南インドも以前は90%くらいだったけど、今は80%くらいに減ってはいますね。
さいむら:それでも、多いですね。
やっぱり、自分で相手を選びたいと思いますか?
Sandeep:みんな自分で決めたいと思っています。
でも、決められない。
両親とか、出生とか、カーストなどによって、自由に決められません。
あとは、星占いが非常に重要になってきます。ホロスコープマッチング。
星占いで相性がよいと結婚します。でも、それはヒンドゥー教だけの話です。
さいむら:日本では、雑誌とかで星占いがありますね。
Sandeep:インドでもスターサイン(星座)だけ掲載している星占いもありますけど、結婚の占いの時に使うスターサイン(星座)と自分が生まれた時間(バースタイム)とそれに加えて、よりたくさんの詳細な情報が必要です。
さいむら:実際に(占いを)されたことはありますか?
Sandeep:やっていません。まだ、結婚したくないっていうのもありますけど、
そもそも、結婚する時にだけするものですから。
さいむら:相手はどうやって見つけるんですか?
Sandeep:結婚の登録サイトがあるんです。
さいむら:登録しているんですか?
Sandeep:登録したら、近々結婚しないといけないからしていません。
そこで気に入った女性がいたら、次にお互いのjathakam※を観ます。
(※jathakam:生まれた時から、両親が記録をつけ始めるもの。性格から未来まで、さまざまな項目がある。占い師が、ホロスコープ(星占い)でお互いの相性をチェックする時に、お互いのjathakam(成人まで書き続けるため、一冊の本くらいの厚さになる)が必要になるようです。)
さいむら:相性が悪かったらどうなるんですか?
Sandeep:相性は点数をつけます。試験みたいに。
それで、例えばもし悪い結果になった場合(あなたは、35年後に死ぬでしょうみたいな)は、その縁談はなかったことになります。
ときどきマッチしないことがあります。そういう文化なんです。
さいむら:日本では考えられないですね。それで、いつ実際に顔を合わせるんですか?
Sandeep:そのホロスコープでも、いい結果がでたら、お互いに実際にあって喋ってみます。
それで、これは人によるけど、トライアウトみたいなお試し期間を2~3ケ月する。
さいむら:えー、2~3ケ月しかないんですか?
Sandeep:なぜなら、時間が無いからです。だって、その人たちは本当の彼氏・彼女ではなく、ただのお見合い相手だから。もし、それがうまくいかなかったら、また次の相手を探さなくてはいけないのでダラダラ長く付き合ったり出来ません。
最近だと、大概1ヶ月程度ですね。
それから、お互いこの関係を続けるか(結婚するか、しないか)決めます。
しかも、長く付き合えば付き合うほど、より関係性が深まってしまうので、次の相手に行きづらくなります。
切るものも切れなくなるじゃないですか。
絶対、誰でも欠点はあります。いずれお互いの問題点は必ず見えてきますし。
基本的なところを1週間か1ヶ月あるいは2ヶ月のうちにお互いの事を知るんです。
たまに、1週間の人もいますよ。
さいむら:決断力がすごいですね。これも日本ではありえないです。
Sandeep:10年前、20年前だったら、そのトライアウトも無くて、会えても5分程度の時間しか与えられなかったみたいです。
5分だけ会って、その後は両親が決めます。
さいむら:5分だけ!?
Sandeep:その面会が終わったら、両親がどうだった?って聞いてくることもあるし、気にいった?って聞かれて。
もし、気に入らなかったら、それを両親に伝えれば(結婚は)やめることができます。でも、両親によっては、断りたくても、断れない場合もあります。厳しい親だったら、意見すら聞いてもらえずに決められてしまうんです。
「会社を持ちたい」
「今後の目標・夢について」
さいむら:今後の目標・夢を教えてください。
Sandeep:私の夢は、自分の会社をもつことです。
さいむら:どんな会社ですか?
Sandeep:アニメーションの会社です。アニメーションが好きだから。
さいむら:いつその夢を持ち始めたんですか?
Sandeep:今の会社で、アニメーションプロジェクトを立ち上げた時です。
アニメーターがアニメをつくる時に、私たちはストーリーボード(脚本)を書かなければいけません。どのように見せたいか、どのように表現したいか。
私が自分のアイデアをだしたとき、クライアントの中には、私に個人的に、とてもいい評価をくれたことがありました。
それから私はより興味をもつようになって、ストーリーボードに対するスキルがあるのではないかと思っています。
だから決めました。
2つのクライアントは、会社にインセンティブを支払ってくれました。もちろん、私個人には1銭もはいっていないですけどね(笑
「God’s own Country!」
「インドで働きたい・興味がある人へ一言」
Don’t miss this great chance to experience the pleasant work culture and wonderful life in Kerala,God’s own Country!
(インタビュー・編集=雜村洸宇、写真=冨田太貴)
初のインド人へのインタビュー。
文化・習慣が大きく異なるインド。日本でいう「当たり前」って何なんだろう。
そう、考えさせられ時間となりました。
より広い視野で物事を考えていこうと思います。